あり方に気づき、人間力強化時代
目標達成だけにフォーカスし、正義を振りかざして仕事をしていた当時、徐々に心身が疲弊して行きました。
正しいことをしているはずなのに、嫌味を言われ、批判を受ける。戦っているのは、自分一人という強烈な孤独感を味わう日々になっていました。
売る方法、売れる方法、売らす方法を必死に考え、販売店さんを巻き込み、目標数字を徹底的に追いかける日々。売れ続ければよかったのですが、ワンパターンの売り方(やり方)は、商材が高額になればなるほど、ファンどころかクレームを増やすようになって行きました。
正しいと思って行動していることでクレームを増やす
正直、悔しかったし、何で俺だけ・・・と、悲観的になりました。
やればやるほど、苦しくなっていく、負のスパイラル、負のジレンマ。
ある日、ある一文が目に止まりました。
心が技術を超えない限り、技術は生かされない
頭をガツンと殴られた感覚がありました。
目先の売り上げに走り、どうすればYESと言ってもらえるか?そこに徹底的にこだわって、テクニックを学び、実践し続けてきた自分。その自分には、人間的な心があるのか?答えはNOでした。
人を思いやる心。商いの原点。笑顔の創造。
その全部を置き去りにしていました。
あのクレームがあったから、今の自分がある
大切なことに気づきかけた頃。
さらに追い討ちをかける、大クレームが発生しました。
お前ら全員、出入り禁止や!
顔も見たくない、帰れ!
呼び出され、謝罪しても、一切取り合ってくれないお客さま。
商品が悪い訳でもない、施工が悪い訳でもない、ただただ「人」に対するお怒り。正座して、謝罪し、許しを請う中で、新しい自分が目覚め始めました。
あなたは、私に対する、誠意もなければ、尊敬もない。
私をお金、数字、として見ているだけで、人間として見てくれていない。
私が改善すべきことを、目の前のお客さまが話してくださる。
畳に頭をこすりつけながら、「ありがとうございます、ありがとうございます」と感謝の気持ちでいっぱいになりました。
その日を境に、変わりました。
徹底的にお客さまを見る。見るために聴く。聴くために会う。
どうすれば、お話をしてくださるのだろうか?
どうすれば、自分に心を開いてくださるのか?
どうすれば、信用してもらえる人間になれるのか?
どうすれば、あなたに任せてよかった!と言ってもらえるのか?
最初からうまく言った訳ではありません。 もがいていたこの時期、一時的ではありますが、大きく実績を下げることとなりました。
それでも少しずつ“あなたが言うから”“あなたを信用して”“あなただから“と 強引な売り方ではなく、信用してもらい、信頼をいただくことができるようになってきました。
メリットトークが通用しない新商材との出逢い
エコウィル、太陽光発電は、取付後何年で○○円“お得に”なります。
光熱費シミュレーションして、しっかりプレゼンすれば売れていました。
また、誰でも簡単に売れるように、ワンパターントークを確立していました。
そんなある日、定価で350万円、補助金130万円、光熱費メリット3.4万円という、メリットトークが通用しない商材を売るように指示がありました。
それが、家庭用燃料電池エネファームとの出逢いでした。
担当する販売店も、自分自身も、メリットトークで売れるようにトークスクリプトを構築していたのに、一切通用しないこの商材の登場。少し前から変えていた“売り方”を一気に変える必要に迫られました。
一般的なご家庭で、一生に一度の買い物は“家”。次に高い買い物が“車”。 その次に高い買い物をしてもらう。それがエネファーム。
コンセントをさせば、普通に電気が使えるのに、わざわざ自宅で電気を作る必要があるのか?それも350万円を掛けて。
この時点で、すでに、僕が罠に嵌っていました。
当時の私は“価値の物差し”を“お金”でしか測れない人間だったのです。
すごい、素敵、素晴らしい、本来なら思ってもらえるはずの商品でしたが、価 格が高いと言う先入観で、売ることに二の足を踏んでしまいました。
価格が高い。
→同じ思いをお客さまはするだろう
→紹介したら、バカにしているのか!と怒られそう
→普通の給湯器でいい!と、どうせ言われる
→言っても無駄なら、言わないでおこう
→その方が双方傷つかないし
→どうせ売れないしね
心の中は、こんな感じでした。
売る前に、提案する前に、自分に負けていました。
本質を伝える、商品が持つ正しい価値を正しい価格で
やりたくなくても、やりなさい、達成しなさいと優しくも厳しい目標設定された、当時の会社。やり方偏重で売れた時代を過去のものにしないと、今会社から求められているものを、達成することはできない。
やる!と決めたら、徹底的にその商品を知ることから始めました。
どうして、この商品は生まれたのか?
どうして、この商品を世に出そうと思ったのか?
どうして、今、このタイミングで必要なのか?
この商品が普及すれば、どんな世の中になるのか?
この商品を使うと、どんないいことがあるのか?
この商品が創る、未来とはどんな未来なのか?
何を伝えたら、心に響くのか?
何を伝えたら、心が動くのか?
何を伝えて欲しいと、お客さまが思っているのか?
世の中に本当に必要とされるものなのか?
調べていくと、この商品のすごさがどんどんわかりだしました。
この商品の魅力に惹かれていくと、心の底から好きになってきました。
メーカーの立場として
お客さまの立場として
営業担当の立場として
様々な視点で深掘りしていくと
ハッとすることに気づきました。
私たちは、商品を買っていない。
私たちは、未来を買っている。
過去でもなく、今でもなく、未来を買っている。
今がどう変わるのか?
今よりどう良くなるのか?
その商品の使用後をイメージして
ワクワクしながら、タイムトラベルしている。
僕らが伝えるべきものは、お金の物差しを使った損得だけではない。
僕が伝えていたのは、ただ手っ取り早かった、損得だけだったと。
私たちは、商品を買っていない。
私たちは、未来を買っている。
正しい価値を伝えていないのに、正しい価格が伝わる訳がない。
価値の物差しを増やそう、価値の伝え方を学ぼう、そんな風に変わっていきました。
やり方より、在り方。
在り方が先、やり方が後。
人間力があるから、技術が使える。
それに気づいてから、出逢う本も変わり始めました。
それに気づいてから、出逢う人も変わり始めました。
そして、独立起業を決意する、1冊の本に出逢いました。
今となれば、わかります。
その1冊に出逢ったのも、偶然ではなく、必然でした。
導かれるように、その本、その著者へ、近づいていきました。